対象疾患|愛知医科大学 呼吸器外科 - Division of Chest Surgery, Aichi Medical University

Lung cancer

2018年に日本で肺癌と診断された方は122,825人、2019年に肺癌で亡くなった方は75,394人でした。すべてのがんのうち、罹患数は大腸癌・胃癌についで第3位(男性4位、女性3位)、死亡数は第1位(男性1位、女性2位)でした。(がん情報サービスganjoho.jpによる)
このように罹患する患者さんも亡くなる患者さんも多い肺癌という病気ですが、治療の進歩などにより、死亡率は低下傾向にあります(下図)。

レントゲンやCT検査で肺癌が疑われた場合は、可能であれば気管支鏡検査などで生検(組織をとって顕微鏡で診断)を行います。その後、PET検査、MRIなどを行い進行度を判定します。ここまでは呼吸器内科が担当することが多いです。一般的にはI期〜IIIA期の非小細胞肺癌とI期の小細胞肺癌が手術の適応となり、呼吸器外科に紹介されます。ただし、複数の専門医による検討を行い、生検を行っても診断がつかなかった場合や、生検なしであっても手術にのぞむこともあります。

1995年以来、肺癌に対する標準手術は「肺葉切除+リンパ節郭清」でした。しかし、近年の臨床試験の結果、2cm以下の小型肺癌に対しては肺葉切除ではなく区域切除も許容されるという結果が発表され(JCOG0802/WJOG4607L)、積極的な区域切除も行っています。ただし、癌のできた場所や大きさ、リンパ節転移の有無、耐術能などによって切除方法が決まります。
愛知医科大学呼吸器外科では、術前に十分なカンファレンスを行い、患者さんごとに適した術式やアプローチ法を決定しています。また呼吸器内科、放射線科など多診療科でも検討を行い最適な治療法を提案するようにしています。「肺が小さくなって生活は大丈夫でしょうか?」と、術後の生活を心配する声をよくお聞きします。急いで階段を登ったり、運動をした際には術前よりも早く息が切れてしまいますが、休憩で回復します。通常の生活には困らないように計算をして切除の範囲を決定しています。ただし、長期間の喫煙の影響などにより、術前の呼吸機能が平均より著しく悪い場合には術後に息切れが持続したり、酸素吸入が必要になることもあります。
当科では、できる限り多くの患者さんに、胸腔鏡手術(VATS)やロボット支援下手術(ダビンチ手術)といった低侵襲手術を行なっています。また、III期などある程度進行した肺癌に対しては、導入療法(化学療法±放射線治療)後の手術といった集学的治療も行っています。
  • 1. 単孔式手術(ユニポートVATS)

    小さな傷口1ヶ所のみで手術を完了してしまうこの術式は技術的に高難度であり、どの病院でも施行可能なわけではありませんが、愛知医科大学ではすでに例を越えるユニポートVATSを行っています。

  • 2. ロボット支援下手術

    ダビンチXiシステムを用いた手術は、胸腔や縦隔などの狭い場所でも複雑で細やかな手術手技を可能にします。より多くの患者さんにそのメリットを感じてもらえるよう。

原則、手術の前日に入院していただきます(月曜日手術の場合は金曜)。入院日に医師から手術の説明があります。術後は集中治療室に入ります。そして翌日には一般病棟に戻り、昼から食事開始、リハビリ(歩行)を開始します。胸腔ドレーンが抜去されれば退院可能で、順調であれば術後5〜7日で退院可能です。