理念|愛知医科大学 呼吸器外科 - Division of Chest Surgery, Aichi Medical University

愛知医科大学外科学講座(呼吸器外科)教授の福井高幸です。
呼吸器外科は心臓と食道を除いた胸腔内の臓器(肺、縦隔、気管・気管支、胸膜、横隔膜、胸壁)の外科治療を行なっています。当科は2003年4月に開設され、初代教授は羽生田正行先生(のちに病院長)が2021年3月まで19年間務められました。私は2021年(令和3年)5月1日から2代目の教授を務めております。

私は医師として呼吸器外科医として次の3つを重視してきました。
「手術(アート)」「研究(サイエンス)」「ハート」
とくに、思いやりや情熱(ハート)を持って診療・研究・教育に取り組んでいます。悩みを持って訪れる患者さんに誠意や思いやりを持って接するのは医師として当然ですが、同じ職場で働く病院スタッフや呼吸器外科医を目指す若手医師に対しても同じ気持ちを持って接します。患者さんからは、ぜひここで治療を受けたい、若手医師からは、ここで呼吸器外科のトレーニングを受けたい、と思ってもらえるような呼吸器外科にしたいと思っています。

初めて外科の診察室を訪れる患者さんは大きな不安を抱えて心配そうにされています。それは当然のことです。私たちはその不安を理解して、少しでも早く心配を取り除くことができるように努力します。私たちが主に相手にしている肺癌を主とした胸部悪性腫瘍に対する手術療法の目的は「完全切除と疾患の根治」ですから、この目的を達成するために目の前の患者さんにとって良いと思えることならば、技術的に難しい手術であっても腕を磨いて臨むことが外科医の責務です。つまり、ハートとアートの両立を目指します。

手術に関しては、患者さんの負担をなるべく減らした低侵襲手術(胸腔鏡下手術:VATS、単孔式VATS、剣状突起下アプローチVATS、ロボット支援下手術 RATS)を積極的に行っています。しかし、患者さんにとっての低侵襲とは傷が小さいことだけではありません。傷が小さくても、手術時間が標準の2、3倍かかり、出血量が多い手術では本末転倒です。スムーズな手術は患者さんにとって侵襲が少ないだけでなく、手術に関わるスタッフの負担も減らします。これを常に念頭に置いた手術を心がけ、自分たちの技術と冷静に向き合いながら、時には複雑で大きな手術も行います。

このように、愛知医科大学呼吸器外科ではあらゆる手術を行なっており、これからも患者さんのために新しい技術も取り入れながら進んでいきます。ハートとアート、サイエンスを大切にし、診療でも教育でも人間関係においても「機に臨み変に応ずる」ことができるチームを作って、ますますの発展を期したいと思っています。